新作「ゼルダ」爆売れの理由分析

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Nintendo Switch用ソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(任天堂、2023年5月12日発売)(c)Nintendo  発売から3日間で世界累計販売本数1000万本を達成したNintendo Switch用ソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」。前作から6年、ヒット確実と見込まれていたものの、その勢いはすさまじい。その人気の理由は何か。ゲームライターの野安ゆきおが分析する。 【関連画像】世界にあるあらゆるものをくっつけられる。試しに丸太をくっつけてみよう。筏ができるはず  Nintendo Switch用ソフト「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、TotK)が、2023年5月12日の発売から3日間で、世界累計1000万本、国内224万本という驚異的な販売本数を達成した(パッケージ版、ダウンロード版合計)。これは、歴代最速で売れた任天堂ゲームとして、ギネスに登録されるほどのスピードだ。販売から4週がたった現在も勢いは衰えるところを知らず、ゲーム総合情報メディア「ファミ通」が発表するゲームソフト販売本数ランキングでも首位を独走している。  なぜ、これほどのヒットになったのか。最大の要因は、17年発売の前作「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、BotW)が傑作と称されたことだろう。同作は、その年のゲーム関連の賞を総なめにし、海外のゲーム関連メディアでは、専門家による歴代最高のゲームランキング1位に選ばれた。販売本数は23年3月末時点で世界累計2981万本(Nintendo Switch版のみ)まで伸びている。  その続編であるTotKは、全世界のゲームユーザーが待ち望んでいたソフトだ。発売前からヒットは当然と見込まれており、発売後の評判もきわめて良好。SNSでは悪口がほとんど見当たらない。海外のゲームフォーラムでも称賛の嵐だ。「世界一と称された前作はすごかったけれど、今回はどうだ?」と欠点を探すタイプのすれっからしのをユーザーたちすら、その完成度でねじ伏せた。  筆者も発売日に購入し、100時間ほどかけてクリア。今はゲーム内世界の探索を楽しむためにプレーを続け、総プレー時間は200時間になろうとしている。それでもなお新しい発見があり、驚きがあり、飽きることがない。「これは正真正銘の傑作」と言い切りたい。 ●「くっつける」ことで何でも作れる  前作のBotWが世界中のゲームユーザーに評価された最大の理由は、これが「何でもできる」ゲームだったことにある。そして、ゲーム内に広がる広大な世界に存在するものにはすべて意味があった。  例えば、生えている木々は単なる風景でもなければ障害物でもない。プレーヤーはそれを自由に切り倒せる。切り倒した木々は丸太となり、その丸太を転がせば坂の下にいる魔物をたたきつぶせる。あるいは丸太を切って薪とし、その薪に火をつける。火は周囲の草に燃え広がって、上昇気流を発生させる。主人公はその気流に乗って高く舞い上がり、風下へと燃え広がっていく炎が魔物を焼き尽くすのを眺めることもできる。プレーヤーが何でもできるだけでなく、その行動が自然現象や物理現象によって周囲のあらゆるものに影響し、ゲーム攻略につながっていく――そんな世界が用意されていたのだ。  続編となるTotKでは、そこに「くっつける」という遊びが付加された。武器や防具、魔物が落とすアイテム、さらには鉱物、丸太、木の枝、地面に落ちている岩に至るまで、プレーヤーは世界にあるあらゆるものをくっつけて、新しいものを生み出せるのだ。  これによって楽しさは数倍に広がった。河を渡りたい? だったら数本の丸太をくっつけて筏(いかだ)を作ればいい。そこに扇風機(風を作るアイテム)をくっつければモーターボートになる。手元に扇風機がない? ならば筏に大きなタイヤを付け、それに板をくっつけて回転させれば外輪船が作れる。いっそ大量の丸太をつないで長い棒を作り、それを橋にしてもいい。このゲームには製作者が用意した正解は存在しない。目の前の問題を解決する方法は、プレーヤーが自由に生み出していいのだ。  試しにSNSを「ティアキン」(TotKの略称)というワードで検索してみてほしい。バギーを作ってフィールドを駆け抜けたり、ドローンで空を舞ったりと、アイデアにあふれた攻略動画が見られるはずだ。爆撃機を作ったり、大砲を積んだ重戦車を作るプレーヤーもいれば、それに「自動的に敵をロックオンする」アイテムを組み合わせて、強烈な兵器を作り、魔物をせん滅していく動画すら上がっている。  この圧倒的な自由度がTotKのすごさだ。同時にこれはゲーム初心者への配慮になっていることも筆者は力説しておきたい。一般的なゲームは操作が上達しなければクリアできない作りが多いが、TotKは違う。腕に自信がなくとも、ひらめきと発想でそれを乗り越え、攻略できるのだ。

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